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ラヴクラフトの友人オーガスト・ダレスの依頼で書き下ろされたCWのクトゥルフ神話小説。この話は短いながらもかなり壮大で破天荒なところもある。『賢者の石』の教養小説、『宇宙バンパイア』の観念小説、と比較すると、ずっとSF的な要素が強い。哲学的、心理学的でありながら、スペクタクルな話になっている。短い作品だが、CW的な要素が詰め込まれており、幾分ラヴクラフトのパロディといった感じでエンターテイメント性が高い。文体として、ラヴクラフト的な雰囲気を取り入れたことが、案外と成功している。
(以下ネタバレ多数) オースティンと考古学者で年代測定の権威ウォルフガング・ライヒが精神寄生体との対決から次第に人間の隠された99%の能力を発揮する方法を習得するようになる。 考古学者のギルバート・オースティンはウプラサ大学時代の友人の心理学者カレル・ヴァイスマン博士が自殺したという知らせを受け取る。 遺跡に隠されていたツァトグァン人―精神寄生体は、人々を侵食し始めていた。オースティンはライヒと共にトルコのジャルバキルにあるカラペテで発掘作業に従事していた。そんなとき、寄生体に意識をかく乱させられていたことに気づき始める。意識の片隅に虫のようなものが蠢いているのに気づいたのだ。そして、発掘は成功を収めることになるが、探索機の測定によると2マイル(3.2キロメートル)の深さに70フィート(つまり21メートル)の高さの物体が発見されたのだ。その物体をテレビ・スクリーンに映すと暗黒の王アブホートの楔形文字が記された玄武岩の小像が現われた。そこへ、アメリカの作家のオーガスト・ダレスからトルコの遺跡とラヴクラフトの関連を指摘する手紙がライヒのもとに届けられる。ライヒとオースティンはラヴクラフトの著作を丹念に読み解くことから、神話が古代の歴史を物語っていることを発見する。この問題は実は歴史にも深く関連していた。ヴァイスマンは『歴史的回想』という遺稿の中で、ツァトグァン人が人類に寄生してきた事実を発見したことを記している。 ヴァイスマンの死もこの寄生体との対立が原因だった。だが、ヴァイスマンは寄生体の監視の目を逃れるために、『歴史的回顧録』という本を執筆しながらも、寄生体については沈黙を保っていた。というのも、寄生体からの妨害を回避するためだった。人類の苦悩の歴史の要因は寄生体による人々の心の抑圧だったのである。 寄生体は人類を意識の問題から遠ざけるために、歴史の重要な時期に戦争を起こしていた。オースティンのグループが超能力を開発している間に、アフリカ合衆国ではクーデターで大統領が暗殺され、オバフェメ・グワンベがケープタウンとアデンの指導者となる。オースティンはこの人物を寄生体がコントロールしていることに気づく。グワンベはアメリカとヨーロッパに奴隷問題の補償を求めて、ヨーロッパの分割とアメリカのいくつかの州を独立させるように要求することになる・だが、これは戦争を起こすための口実に過ぎなかった。 オースティンは月から精神寄生体の振動波が送られていることを見つけて、宇宙船で接近して、超能力によって月を動かして、月の裏側を地球に向けることに成功する。 最後には、太陽系の果てで、宇宙警察との遭遇している話も出てくる。 クトゥルフ神話ファンには、ぜひ薦めたい小説。
by taxi1729
| 2004-06-26 03:47
| 小説
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